11.28.2012

11月28日 教材を見せてみる

今年も日本からの専門家の派遣に伴い、
そちらの事業の予算で日本で「教材=education material」を作成して持ってきていただけることになった。

今回作成する予定の教材のテーマはハシビロコウに関するもの。

具体的な中身について、こっちのスタッフが日本に派遣されている時に打ち合わせをしてくる手筈が、今年はべリンダとニコラスが行ったときにその時間が忙しくてとれなかった様子で、まず昨年と同じタイプのものでいいかと先方から提案が送られてきた。

僭越ながら「待った」をかける。

現場にいるものとして「え?」という空気を感じ取ったもので。
昨年リクエストしたからといって、今回も同じタイプのものがほしいとは限らない。
テーマや使用状況により、必要な教材は変わってくるのも当然な話。

では、どんな教材がほしいのかリクエストのためのアイディア出しミーティングを仕込んでみた。

ちょうど最近、新たなハシビロコウ生息地近くのコミュニティとの絡みが出てきたこともあり、コミュニティや学校での普及啓発の機会は増えると思われるところ。

大人数相手に「ハシビロコウはこんな鳥」とか、
「この鳥を保護するメリット」とかを説明できる“material”がほしい、という話になる。

が、問題はそこから先。
ではポスターやパンフレットを予算の限り作ってもらおう!
という案に落ち着きそうになる。

僭越ながらこちらにも待ったをかける。

「教材」=materialのニュアンス、
意図するところが日本人とウガンダ人とではけっこう異なる。
この、教材に対するとらえ方の違いには2年間なかなか越えられない壁を感じてきた。
手作り教材がなかなか普及させられなかった理由の一つもコレだと思っている。

あげるのもらうの大好き、の、こちらでは、
教材と言うとかなりバラ捲き用の配布物に発想が偏る。
つまり、モノでつって聞かせる作戦。
でも日本側がイメージするのは普及啓発を実施する時に説明に繰り返し使ってもらえる「小道具」。
教材というのはあくまでどんな状況でどう使うか、という点とセットなので、道具なしで様々な活動をしてきている彼らには発想するスイッチが入りにくいんじゃないかとも思う。

で、配布物以外のアイディアが出ないし、
わたくしがちらっと日本の教材の例を説明してもピンとこないみたいなので、

本日、最終兵器とともに出直した。

とりあえず有無をいわさず、
日本から持ってきて秘蔵していた
「タンチョウ普及啓発教材」を見せる。

タンチョウ実寸大パズルとか

タンチョウの卵実物大(コレ、色白いとベストなんだけど・・・)

からの

ヒナ(生後10日)実物大ぬいぐるみ誕生
(どちらも「日本野鳥の会」発行のもの。)

見せてやらせたら、
おおおおお!こういうことか!
という目の輝き。
100聞は一見にしかず、です。

「ハシビロコウは連れていけないから、実物の姿や大きさがわかるのはいいなあ」
「パペットは見たことあるけど、ウガンダでは作れないからほしいなあ」
とか、少し具体的な意見が出てきた。

それらをまとめて
ハシビロコウのパペットをリクエストしてみることになった。
実現するかどうかは先方の予算次第だ。
でも
あの嘴を実物大で表現できてパクパクさせられたらかなりインパクトがあるだろう。
個人的にもほしいな~・・・。

「あ、比較のためにハゲコウのパペットもリクエストしよう」
・・・それは教材としてはいいけど、さぞかしかわいくないことだろう。


でも、もっと早くこういった教材を見せていれば・・・


とは、思わない。

教材作成について真剣に考えている今がそのタイミングだと思ったから見せた、
それだけのこと。

2年間のんびりやってきて、のんびりし過ぎた時もあったかもしれない。
でもその中で、タイミングによって提案やアイディアへの反応が違うことをずいぶん見てきた。
活動期間も残り少なくなった今、
本当にいろんなことが遠慮なく話し合えるようになって、色々な仕事が急速に動くようになってきた。
多くのものは残せないけど、これでよかったんだと思う。

正直もうちょっと時間があれば、と、思わなくもない。

11.19.2012

11月13日 カメレオン始めます


大量のカメレオン


と、毒ヘビがやってきた。
(治療されたカメレオンたちがとりあえずダンボールに仮収容の図)

当センターにとって動物が急に増えるのは、野生動物保護という側面では大体喜ばしくない理由によることが多い。

今回は空港での差し押さえ。
木箱に白い袋に小分けにされたヘビががみちみちに入れられていたところを、UWAが発見、御用にした。
さらにその下に超みちみにカメレオンが詰め込まれているのがわかったのはここに来てからの話。

アフリカ内でもエンテベ空港の荷物チェックはどうも甘いらしく、「裏業界」に付け入る隙を与えているようで。
(ウガンダから日本への麻薬持ち込み事件は記憶に新しいところ。弊社からはそれ以降、隊員が巻き込まれないように常に注意喚起が行われている。)

野生動物の密輸も(生死を問わず)例外ではないようで。


で、治療や取材が落ち着いたところを見計らい、救出された爬虫類たちを動物病院に見せてもらいに来た。

ヘビのほうは1匹ずつ袋に入れられて安静にさせてあった。
開けてまでは見ないよ。
だって全部毒ヘビだっていうし。
(でもいるんだよねペットに飼うって人・・・)
危ないあぶない。

とにかくカメレオンBoxに目を奪われる。

いろんな種類が混じっている。
みんな思い思いに葉っぱとか枝とかダンボールに擬態している。
正確には見分けられないけれど、4種類以上はいそうだ。

2本角の種類。かっこいいね君。


こちら3つ角。トリケラトプスみたいだ。


色鮮やかなこちらは・・・お腹がふっくらしているので妊婦か?
動きも人一倍おっくうそう。安産を祈りましょう。


カメレオンはとにかく動きがゆっくりしていてユーモラス。
何しろ92匹ものカメレオンが入っているので、
移動が大変そう。お互いの手や背をつかんだりしながらのらりくらりと移動している。

生きた昆虫(ハエなど)を食べるのでその手間はあるけれど、ペットとして人気が出るのもうなずける。

いや~・・・めんこい。
癒され度がリクガメといい勝負。

ポッケに入れて持って帰りたい衝動を抑えるのが大変だ。
せめて元気そうなやつを手に取って戯れる心ゆくまでじっくり観察する。


でも、能天気モードから現実に話しを戻すと。
このダンボールの脇には選り分けらえた遺骸があった。
もちろん後で埋葬する。
(白い袋はヘビね、そっちは生きてますよ)

木箱に詰め込まれていたカメレオンは全部で147匹で、そのうち55匹がダメだったそうだ。
今アフリカを出る前でこれだったんだから、
輸出先に着いた頃には何匹が死んでいたんだろうか、と思ってしまう。


夕方には爬虫類館の一角がカメレオン展示コーナーに早変わりし、そこに放たれた。


・・・広くて探すのに一苦労


かと思いきや、

さすがに92匹もいるとすぐに1匹2匹は見つかる。探すの意外と楽しい。

但し、

いるとわかっていればだけど。
(何しろ相手は擬態します。しかも命をかけた真剣勝負)

ラミネーターが修理から戻ってきたら看板作ろう・・・。
(かれこれ3か月修理待ちであてにならんけど)


彼らを楽しく探してみてほしい。
そして知ってほしいことがたくさんある。

11.06.2012

11月6日 エン・スワ

本日朝、出勤のとき。

雨期の半ばの束の間の朝日を浴びてキラキラと輝く路面。

 光っているの全部、虫の翅。



持ち主の正体はこちら。
シロアリの王様&女王様。
ルガンダ語で「エン・スワ」
雨期の狭間のある夜、大量発生し、交尾の為にぶわっと飛び立つ。
で、移動したらどうやら翅は落ちる仕組みらしく。
(出会いサイトに着いたら翅はいらないってことだね)
カップルになるべく追いかけっこ中。
(たぶん、オスが後ろ=追っかけてるほう、で、メスが前)

ここは夜中も街灯がついているから、その明りに集まっちゃったんだろう。
集団見合い状態。
尋常じゃない量が落ちているので、車や人が踏んでいく。
踏まれた残骸は残骸で普通の黒いアリンコが片づけているから、とりあえず白黒のアリが道路一面にいる(シロアリも色は白くないけど・・・)。


そしてそんな「エン・スワ」を拾い集める子供ら。

ウガンダ人これ食べます。
なにしろ繁殖の為だけに生まれる王様&女王様は、見るからにぷりりとしていて栄養満点っぽい。
調理はシンプルに、フライパンで炒るだけ。
おわんいっぱいに季節の味覚。

海なし国ウガンダでは、虫は特にかつては貴重なタンパク源だったことだろう。

でも、食料が安定供給されているこのご時世、
今も食べるってことは、「珍味」なのか?



もちろんこんな栄養価の高い虫を動物もほおっておくわけはない。

でこっぱちとがっしりとした太ももが素敵なサイチョウ。
(これは必要以上にデコが立派だから多分オス)
普段は樹上にいるのに、今日は地べたで朝食にエン・スワを堪能中。
なにしろ、動きまわらなくても、シロアリが次から次へと近寄って来るもんだから、ただ立ち止まってひたすらそれをつまみ続けることができる。
シロアリわんこそば状態。

こちらも実にうまそうに食べる。
食べすぎで飛べなくなるまで食べ続けていそうな勢い。


で、問題は自分も味見にトライするかどうするか。



・・・明日もまだエン・スワがウロウロしていたら、その時考えようかな。