9.26.2012

9月19日 携帯ガイドとボリボリとKalinzu Forest

ツアーに参加してガイドさんと一緒にチンパンジーを見に行く。
見に行く群れは、昨日調査したのと同じグループだ。

***
「Kalinzuに行ってもチンパンジーが見られない。」

・・・という評判が一時、隊員のなかで流れており。

研究者サイドこの点についてに伺ってみたところ
「ルールを守らないガイドがいるために、チンパンジーが嫌がって逃げてしまっている可能性がある」
との懸念を示していた。

***

今日は散策専用のトレイルから同じ森へ入っていく。

苔やシダが多くて雰囲気がいい。
湿気が高いためかキノコもいっぱいある。
これは採集民族としては大変テンションがあがる。
「この辺の人が食べているキノコがあったら教えて」とガイドにお願いする。

地べたから直接咲いている花、「ソヌンガイ」。
毒らしい。

「絞め殺しの木」はイチジクの仲間。
イチジク系だけでこの森には42種類もあるとのこと。
実をチンパンジーが食べる。

ククインバという木の実。
熟すると甘いらしく、チンパンジーも人も食べる。
「俺も好きだ」とガイド。

エコツアーのガイドさんは4人。この地域出身の人が多い。
本日担当の方は結構ベテランで、野生動物のガイドの学校も卒業しているし、勉強の為にアメリカに渡ったりもしている。
説明もわかりやすい。
今までウガンダでガイドしてもらった中でいちばんガイドらしい印象。

それにしてもこの人、森の中でよく電話をする。
電話の相手はチンパンジーを探しに先行している昨日のムゼイだろう。
・・・Queen Elizabethの時のガイドのペトラも電話で調査班とチンパンジーの位置のやりとりをしていたけど、あの時はあまり気にならなかったんだよな。
声のボリュームの問題だろうか。

チンパンジーの鳴き声がきこえた。
そちらの方向に急いで分け入っていく。

しばらく進むとまた鳴き声。
・・・あれ、声が遠くなってないか?

先行のムゼイと合流。
何事かやりとりしてさらにがつがつ進む。
ちょっと速いな。


興味がキノコに時々偏るわたくしの特殊な目がコレの姿をとらえたのはそんなときだった。

・・・
もしや君は「ボリボリ」では?

この瞬間、素でチンパンジーどうでもよくなる。

和名ナラタケ。方言でボリボリ、さもだし等と呼ばれる食用キノコ。
「キノコハンター」を自負するならコレを見分けられなければ論外な庶民的なヤツ。
外見的な特徴から判断してコレ、かなりの確率でボリボリの仲間だろう。
知りたい。
食べられるのか。ウガンダ人もコレを食べるのか。
めちゃくちゃ知りたい。聞きたい。

満足いくまで眺めて写真を撮って、「採集民族モード」から我にかえる。

ガイドは先のほうでチンパンジーを追っている。
チンパンジーの気配が周囲に拡散しているように感じた。
色々落ち着くまで待ったほうがいいかなと思って、なんとなくその場で待機する。

ガイドが手招きをしたので。
見えやすいところまで近づいて観察を開始。
ちょうど発情を迎えたメスがいて交尾も観察できた。
自然な営み。
一応おちついているように見える。

でも一方で、昨日以上に彼らがこっちを見ている気も。
誰かが動くたびに、枝を折るたびに、カメラのシャッターを切るたびに目がこっちを向く。
こころなしか彼らの緊張を感じる。

昨日からの蓄積か、すぐに首が疲れたので、観察は40分ぐらいで切り上げた。

さて、ここのチンパンジートレッキングのルールは。
①1回に1グループ(最大6人まで)のみ(散策所要時間が大体4時間)
②チンパンジーに出会った後、観察は最大1時間まで
③観察はチンパンジーのいるポイントから10m以上離れて
④騒音を立てない
等々(もっとあるけど省略)。

う~ん・・・
③と④に関しては確かにどうだったかな~。
音に関しては、そもそもウガンダ人は騒音に無頓着なので根本的に基準が違うかも。

そもそも森に入る前に今日はルールの説明がなかった。

ツアー終了後にガイドにルールについて話を聞いてみる。
チンパンジーを守りツアーを続けていくためにルールの大切さは十分に理解しているようだった。
「ただ一方で、そのルールを尊種するために必要なシステムが欠落している(ルールの周知から賃金問題に至るまであらゆる点で)」と指摘、主張。
チンパンジー見たさに無茶を通すお客さんやエージェントのことにも言及していた。
・・・「言い訳」分は冷静に差し引くとしても、彼らにも筋の通った言い分がある。

その後、現場の森林官と話したら、やっぱり
「ルールが上から周知されていないのが問題」などと言う。
「・・・見りゃあわかるように壁に書いておけば?」
とマジックを取り出したら笑って止められた。

ルールがある!と胸を張る一方で自分ではそれを周知したがらない現場の不可思議さ。
なんか色々根深そうだ。

昨日も今日もチンパンジーは非常によくこちらを見ていた。
彼らにとって嫌な行動をする人たちを個体識別するぐらい朝飯前だろうなと思った。
何にせよツケが跳ね返ってくるのは一過性のビジターではなく頻繁に入る現場の人たちに、だ。


・・・で、
不覚にもそんな真面目な聞き取りにうつつをぬかしているうちに
結局ボリボリ的キノコの正体を聞きそびれてしまった。

しまった!
何やってんだ~せっかく見つけたのに!
大反省。