9.28.2012

9月20日 スネアとアヒンビ君とKalinzu Forest


調査チームは毎朝7時頃集合。

朝ごはんに皆でメイズ(トウモロコシ粉)のポリジをとり、点呼をし、調査機材を持って2人組ぐらいにわかれて出かける。

朝食中の一番若いアヒンビ君。

彼はここでの調査の仕事をやって1年だという。
この仕事は楽しい、チンパンジーが好きだと楽しそうに色々教えてくれた。
人柄的にエコツアーのガイドなんかにも向いているんじゃないかと思う。

調査スタッフのほかにも、サイトの中での管理や密猟パトロールなどのために多くの人がコミュニティから研究サイトに雇われている。
中には10年近く続けている人もいる。
これらの人々の多くは、もとはこの森で狩猟、つまり密猟もしていた人だ。

森林保護区では、薪やキノコ、薬用植物などの資源は、
決められたルールのもとでコミュニティの人が利用できるようになっている。
だけど野生動物の狩猟は禁止だ。
(国立公園や森林保護区外であっても原則として野生動物の狩猟は禁止。
・・・の割には移動物園なんかで地方に行くと「アレ美味い」「コレ食べられるの?」等の会話をずいぶん耳にするのはたぶん気のせいではない)

でも。

パトロール隊は1日に4個~5個のスネア=くくり罠を回収することもある。
時々処分していても罠はすぐに箱一杯に集まってしまという。
獲物として狙われているのはホロホロチョウやダイカーなどで、チンパンジーではない。
ただし、樹上から地上まで縦横無尽に利用するチンパンジーはあやまって罠にかかってしまう。
今回、スネアで怪我をしたままの腕をぶらさげている個体も見かけた。

狩猟の為に森を知り尽くしたおじさん達は、一旦巻き込んでしまえば最高の戦力だ。
動物の行動も、どこにどんな木があるかも、密猟者がどこに罠をしかけるかも、よく知っている。
商業利用と結びつく以前の本来の狩猟は、持続可能な方法で森を活用していくことの一翼であったはずで。
その営みにも森と共に暮らしてきた文化や知恵がある。

初期から巻き込んでいるコミュニティの人々の密猟は止んだという。
雇われて意識が変化した人を通じての普及啓発の効果も大きいだろう。

だからアヒンビ君のような若者世代は、狩猟の経験がない。

おじさん達のようなバックグラウンドを持たないかわりに、森のこともよく知らない。

彼は、研究者やおじさん達から、調査の中で森の事をひとつひとつ教えてもらって覚えていくのがまた楽しい、という。


おじさん達がポリジを分けてくれた。

飲みながら話す。

ごくん 「エンテベのお前の所にもチンパンジーはいるのか」
ずるずる 「いるよ。毎日朝と晩にポリジを飲んでいる」
ず~っ 「・・・あいつらが、どうやって飲むんだ?」
ずずず 「マグカップであげる。自分で取っ手を持って飲むヤツもいるよ。」
ぶっ 「ええ!俺たちが皿で飲んでるのに!」

すかさずルニャンコレ(現地語)で仲間たちに説明。
もっかいルニャンコレでどよめき発生。言ってることは英語と多分同じなんだろう。

更に驚愕?の事実を伝えてみることにする。

「・・・しかも、うちのチンパンジーは砂糖を入れないと飲まないんだよ」

「ええええ!俺たち普段ノンシュガーなのに!」

通訳のワンテンポをおいて英語とルニャンコレごちゃまぜの驚愕と笑いが巻き起こる。



森林の持続可能な利用の形が、
形は変わっても、おじさん達がもともと持っている知識を廃れさせることなく、
次世代につなぐ機会にもなっていく。
その流れがうまく続いて行ってほしい。


「次来るときはチンパンジーの分の砂糖を持ってこい!
俺たちはここのチンパンジーを調査して守っているんだし!」
と笑って言う。


ホントにそうだよな。


そうしよう。
次があったら、だけど。